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【第12回】
私の「建築のもと」

海辺に見た平和的風景  著:岩川卓也

1枚目はノルウェー・ヴォス近郊のフィヨルドの写真です。フィヨルドは海なので川のような流れはありませんが、この日は風もない穏やかな天気だったため、波もない静かな水面には、背景の山並みがきれいに映し出されとても幻想的な風景でした。


水面が背面の景色に同化することで、陸と海との境界線はぼやけてあいまいになり、まるでひとつのつながった風景のようになっています。ボーッと眺めていると水の存在を忘れて海に足を踏み入れてしまいそうで、その静寂に満ちた風景に非常に平和的な気持ちになりました。




2枚目の写真はポルトガルのポルトから北へ約50kmほど行った海岸です。白い波しぶきを上げて打ち寄せる波のラインの美しさ、引いていく波の動き、波の音、風の音、人々の声、そして浜辺でビーチサッカーをしている少年たちの姿に心和まされた風景でした。そしてやはりここでも平和的な気持ちになったことを覚えています。

これらは両方とも海の写真なのですが「静」と「動」でまったくその印象は違います。しかしそこから感じた平和的な感情は共通していました。それは水辺との関わりに起因しているのかもしれませんし、陸と海との接点のありように起因しているのかもしれません。

建築の場合、計画の中に水辺を取り入れるケースは多く見られますが、水辺との関わりや水辺との接点のありようを考える上で、これらの事例で感じたことは非常に大切なことなのではないかと思いました。

岩川卓也

http://www.iwakawa.net/

【第11回】
私の「建築のもと」

木製の屋根付き橋からの風景  著:岩川卓也

1枚目はイタリアのバッサーノ・デル・グラッパにて橋上から見た風景の写真です。この町はヴェネツィアから北へ約100kmの場所に位置し、町の中心にはブレンタ川が流れているグラッパ山のふもとの小さな美しい町でした。

川にかかる木製の屋根付き橋(アルピーニ橋)は町のシンボルになっていて、その橋の上から見る風景は山々を背景にした美しい町並みが非常に印象的でした。そしてその日は雪が残る寒い日でしたが、他の場所から見たときに感じた自然の厳しさとは違い、木の橋の上から見たその同じ町並みには何故かあたたかさを感じていました。




2枚目はブータンのプナカゾンを橋上から見た写真です。ゾンとは行政と寺院の機能を備えた城塞のことで、日本でいうと役所や議事堂などにあたる場所なのですが、その全景を見たときは威厳があり、まさに城塞といったイメージ通りの印象でした。

このゾンは紫色の花が美しいジャカランタの並木に囲まれていて、左右に川が流れているため中に入るには木製の屋根付き橋を渡るようになっていました。しかし屋根がある木造の橋に足を踏み入れた瞬間、今までは遠い存在に見えていたゾンが急に身近な風景として目に映ってきました。そしてその時バッサーノの橋のことを思い出したことをよく覚えています。

これらは、ものを通して見ること見せることによって建物や町並みの印象が変わってくることを再認識させられた事例です。そしてこのことは建築を計画する上でのアプローチ部分の大切さを教えてくれているようにも感じられました。

岩川卓也

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【第10回】
私の「建築のもと」

屋根の力  著:岩川卓也

1枚目は沖縄の中村家住宅の写真です。18世紀中頃に建てられたというこの住宅が沖縄戦の戦禍をのがれたという事実にまず驚き、そして敷地内に入るとその屋根の美しさに惹きつけられました。

住宅の周囲は防風林として屋根よりも高い木(フクギ)に囲まれていました。そのため周囲の家々とは縁が切れていたため、漆喰で固められた赤い瓦屋根の存在をより強く感じていたのだと思います。棟の長さが短い寄棟の大きな屋根のデザインは重すぎず軽すぎず、心地よい安心感を与えてくれていました。




2枚目の写真はクロアチア・ドブロブニクです。旧市街の周りを取り囲んでいる城壁の上から旧市街を見下ろしています。同色の洋瓦で統一されている屋根が一面に広がり、背景の青いアドリア海とマッチした美しい風景でした。

屋根は機能としては強い日差しや雨風をしのぐという大切な役割を担っていますが、ドブロブニクの一面屋根の風景を眺めていると、家々の屋根が集まることによって街の風景がつくりだされているということを改めて気づかされます。

設計中に屋根のデザインに行き詰ると、道を歩いている時も電車に乗っている時も屋根ばかりを目で追ってしまうことがしばしばあります。屋根を中心に建築を見ていると屋根がいかに街並みに影響を与えているのかが見えてきて、建築のおける屋根の力を再認識させられます。

岩川卓也

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